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サンスクリット・スミス

 カナダのトロント大学に,学生たちから恐れと愛情を込めて「サンスクリット・スミス」と呼ばれる名物教授がいるという噂を初めて聞いたのはもう20年以上前になります.その名物教授、Ronald Morton Smith (1915-1997)は,イギリスの Galashields に生まれ,セント・アンドリュース大・オックスフォード大・ケンブリッジ大で学び,トロント大学に迎えられて,サンスクリット・インド学科や東アジア学科でヴェーダ語・サンスクリット語・パーリ語・プラクリット語・アヴェスタ語を担当する謹厳実直な教師であったそうです.
 しかしこのスミス教授の名を更に高めたのは,出生地を見ても私などにはピンとこなかったのですが,(イングランド人ではなく)スコットランド人であり,そのことに大変誇りを持っていたので,一年中高地スコットランドの民族衣装である kilt ,タータンチェックの柄のあの男性用のスカート状の服を身につけていたことだそうです.年中羽織袴で教壇に立つ(しかも日本の外で)漢文教師という趣でしょうか。
 サンスクリット・スミスは,日本語も韓国語も学び,韓国の伝統美術にも造詣が深かったということです.まだ業績を調べ尽くしていないのですが,日本語・日本文化に関する論考があれば是非見てみたいものです.
 カナダに The Scottish Studies Society という 団体があって,サンスクリット・スミスはそこの有力メンバーであったようです.この団体のニュースレター "The Scots Canadian" の2003年の号に彼に関する記事があります.5頁です.

http://www.scottishstudies.com/vol-15-ssf-newsletter-winter-spring-2003.pdf

 うかつなことで,今まで気づきませんでしたが,英連邦の中ではどこでも,スコットランド人やアイルランド人やウェールズ人がそれぞれにアイデンティティを守り,同郷者の親睦団体などもあるのですね.

 憧れの人生です,サンスクリット・スミス先生!