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やまみちゆか『クラシック作曲家列伝』

 ピアニストでイラストレーターのやまみちゆか『クラシック作曲家列伝』(マール社,2021.7)が届きました.

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 今年の3月に『ぼく、ベートーヴェン』(カワイ,2021.3)が出版されたばかりです(すぐ買いました).やまみちゆか氏は,ツイッターで今までとは違う親しみやすい感覚で作曲家たちにアプローチした作品をたくさん発表していて,本にまとめられるのを楽しみに待っておりました.
 亀『レキアイ!歴史と愛』vol.1&2(星海社COMICS,2018-19)で描かれている作曲家たちも気に入りましたが,やまみちゆか氏の描くブラームスなども新鮮でした.もっともっと描いてもらいたいと思います.

frangoという動詞

 サンスクリット語における動詞の現在組織の10類のうち,第7類に分類される動詞は「挿入類 infigierende Klasse」と呼ばれ,語根の語末子音の前に,系統を同じくする鼻音を挿入して弱語幹を形成します.rudh- → rundh「妨げる」,yuj → yuñj-「繋ぐ」,bhid- →bhind-「裂く」.サンスクリット語ではこのように文法化されていますが,このような造語法は古く遡るらしく,ラテン語にも何語が残骸があります.frango → fregi「砕く」,fundo → fudi「注ぐ」,relinquo → reliqui「残す」,rumpo → rupi「破る」,vinco → vici「勝つ」.
 この奇妙な造語法が昔から気になっていました.特に g→ngの「挿入」は論外で,これは別の音韻になる変化です.どうやらこれは,鼻音を「挿入」する変化なのではなく,語末子音を「声門閉鎖」によって,韓国語に言う「濃音」にする変化,その名残ではなかったかと思います.「無声音・声門閉鎖音・帯気音」の対立が,印欧語の最古層における破裂子音の区別であろうというマルティネの推論に合致するものです.とはいえ,こんなことはとっくに歴史言語学の世界の常識で,不勉強な私だけが知らなかったことかもしれないと恐れます.
 こんなことを考えていたのは,fragileという形容詞にこだわっていたからです.語源を確認するために,スマホのアプリ版のGeorgesの羅独辞典を調べると,驚いたことにfrangoが出ていない.探し回ったら,単なる誤植で,fragoという見出し語になっていました.スマホのアプリ版のGeorgesは,1869年の初版が元になっているので,そちらも確認しましたが(この手の本は現在ネット上でいくらでも閲覧可能なので!),ちゃんとfrangoになっていました.これはスマホのアプリ版の単純なミスです.「挿入類」であるがこそのミスだと思うと,なんだか可笑しくなりました.

松月堂の「うにごはん」

 あっという間に7月になってしまい,締め切りに追われています.本日の夕食はお土産に頂いた,一関松月堂の「うにごはん」でした.蒸しウニがたっぷりのっていて,付いていたお漬物も量が物足りないくらい美味しく,忙しいときに幸せな食事でありました.
 ところで,初めて包み紙をしげしげと眺めていて,不思議なことに気づきました.

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 お分かりいただけたでしょうか.どうやらタイ語が書かれています.タイ語はずっと昔に挫折したままなので,意味も分からず,音にもできず,テクストの内容から,タイ語だけが選ばれてここに印刷されている理由を推測することもできません.でも,「うにごはん」と書いてあるだけなんですかね.きっとそうなんでしょうね.
 中身が美味しいだけでなく,包み紙でも楽しませてもらったひとときでありました.

数詞の話

 語学の教員としての念願だったことの一つに,数詞についての全てをまとめた教材を作ることがありました.コロナ禍の下でのオンライン授業のために,これまで使ってきた教材を全て見直す中で,昨年ラテン語について,あのややこしい暦法を含め,ようやくまとまった教材を作ることができました.昨日今度は現代ドイツ語の数詞をまとめることができて,ほっとしています.
 日付表現や時刻表現,数式の読み方の基礎の他に,分数詞(Bruchzahlen)とか数副詞(Zahladverbien),配分数詞(Distributivzahlen),倍数詞(Vervielfältigungszahlwörter),類数詞(Gattungszahlwörter),反復数詞(Wiederholungszahlwörter)など,それから「小数・分数・パーセンテージと動詞の数の呼応」についてとか,なかなかまとめて学ぶ機会がありません.ああ,こうやって書いている間に,いくつか抜けている点を発見してしまいました.今晩早速作り直しです!

 分数をなぜ序数詞によって表すのか,恐らくラテン語の語法から来たのではないかと思います.
 ラテン語には「部分」pars, partis f. を使って,分数に2つの言い方がありました.「2つの部分」duo partesと,tertia pars「3番目の部分」です.「2つの部分」duo partesとは,「3つに分けた残りの2つ」,つまり2/3を表します.「3番目の部分」tertia parsとは,「3つに分けた最後の1つ」,つまり1/3を表します.
 なぜこういう考え方をするのか,なかなか理解できませんでした.小さい頃から数学的な,普遍的な見方を叩き込まれているので,そういう見方の「無駄さ」に気づけないでいたのでしょう.例えば,7つに分けて3番目の部分とか,11に分けて3番目の部分とか,なるほどよく考えてみると,日常的にそんなに必要はありません.同じく,7つに分けたもののうち,2つが残っている,とか,11に分けたうちの,3つが残っている,というのも,それほど必要な表現手段でもないのです.何かを部分に分割した場合,私に一番関係のあるのは,私の取り分になる1部分でしょう.必要があって分割したのだから,私の取り分を取った残りもあっという間に引き取り手が決まるはず(もしくは決まっているはず)です.だからラテン語では分割した際に,最後の1部分と,残りの部分に分けて考えることから出発しているのです.自ずと分母は明らかだというわけです.土木建築にあれだけ技術水準の高かった古代ローマ人がこれでトラブルなく仕事を進めていたのだから,これで良いのでしょう.

 ドイツ語史・ゲルマン比較言語学の分野の俊英で,若くして亡くなった飯嶋一泰先生が,その早すぎる晩年にゲルマン諸語の数詞について関心を持っていたのを思い出します.該博な知識を軽やかに整理した論文を渡してくれながら,こんな風にまとめてみたんだけど,どう思う?意見を聞かせてよ,と気負いもなく仰る,その口調がまだ耳に残っています.出来の悪い後輩の私なんかにまで,きさくに声を掛けて下さって.せっかくいただいた論文なのに,まだ読みこなせてもおりませんよ,飯嶋さん.定年近くなって,やっとこんな基礎的な教材をまとめられたばかりです.

牛飼いの歌

 南フランスのラングドック地方に,中世後期,アルビジョワ十字軍が終わった頃から歌われ始めたという謎めいた民謡があります.オック語で "Lo boièr (Le bouvier)"「牛飼い(あるいは,貧農)の歌」という歌です.多少の異同はあるものの,オック語では大体次のような歌詞だそうです.アルビジョワ十字軍で滅亡させられた中世最大の異端カタリ派の暗号であったが,奇怪な母音のルフランを含めて,もう誰もその意味を知るものはないそうです.

Quand lo boièr ven de laurar (bis)
Planta son agulhada
A, e, i, ò, u !
Planta son agulhada.

牛飼いが仕事から戻り,牛飼いが仕事から戻り,
鋤を突き立てた,
ア・エ・イ・オ・ウ
鋤を突き立てた.

Trapa (Tròba) sa femna al pè del fuòc (bis)
Trista e (Tota) desconsolada...

妻が火のそばにいて,妻が火のそばにいて,
悲しみ憔悴していた,
ア・エ・イ・オ・ウ
悲しみ憔悴していた.

Se sias (Se n'es) malauta diga z-o (bis)
Te farai un potatge (una alhada).

病気なのなら言ってくれ,病気なのなら言ってくれ,
ポタージュを作ろう,
ア・エ・イ・オ・ウ
ポタージュを作ろう.

Amb una raba, amb un caulet (bis)
Una lauseta magra.

カブとキャベツと,カブとキャベツと,
やせたヒバリで,
ア・エ・イ・オ・ウ
やせたヒバリで.

Quand serai mòrta enterratz-me (rebomb-me) (bis)
Al pus fons (Al prigond) de la cròta (cava)

私が死んだら私を埋めて,私が死んだら私を埋めて,
地下室の床に,
ア・エ・イ・オ・ウ
地下室の床に.

Los pés virats (Met-me los pès) a la paret (bis)
La tèsta a la rajada (Lo cap jos la canela)

足を壁に向け,足を壁に向け,
頭は蛇口に向けて,
ア・エ・イ・オ・ウ
頭は蛇口に向けて.

Los pelegrins (E los romius) que passaràn (bis)
Prendràn d'aiga senhada.

巡礼者がやって来て,巡礼者がやって来て,
聖なる水を取るだろう.
ア・エ・イ・オ・ウ
聖なる水を取るだろう.

E diràn « Qual es mòrt aicí ? » (bis)
Aquò es la paura Joana.

そして『ここに埋葬されているのは誰ですか』と聞くだろう,
そして『ここに埋葬されているのは誰ですか』と聞くだろう,
それは哀れなジャンヌだ.
ア・エ・イ・オ・ウ
それは哀れなジャンヌだ.

Se n'es anada al paradís (bis)
Al cèl ambe sas cabras.

彼女は天国に行った,彼女は天国に行った,
雌ヤギを連れて天に昇った,
ア・エ・イ・オ・ウ
雌ヤギを連れて天に昇った.

現代フランス語訳は次の通りだそうです:
Quand le laboureur revient de labourer (bis)
Il plante le soc de sa charrue (l'aiguille) / ou son aiguillon
A, e, i, o, u !
Il plante le soc de sa charrue / son aiguillon.

Il trouve sa femme auprès du feu (bis)
Triste et affligée...

Si tu es malade dis le moi (bis)
Je te ferai un potage.

Avec une rave, avec un chou (bis)
Une tranche de lard maigre ( 'lauseta' veut également dire 'alouette' ).

Quand je serai morte enterrez-moi (bis)
Au plus profond de la cave

Les pieds tournés vers le mur (bis)
La tête sous le robinet (du tonneau)

Quand les pèlerins passeront (bis)
Ils prendront de l'eau bénite.

Et diront « Qui est mort ici ? » (bis)
C'est la pauvre Jeanne.

Elle est allée au paradis (bis)
Au ciel avec ses chèvres.

どこか不気味で,胸に染み入るような哀愁のあるメロディーです.合唱でシンセサイズしてみました.

https://youtu.be/GGuzNYHQum4

色々美しい編曲が公開されています.しかし The Oxford Trobadors の演奏がリアルなのだろうと思います.

https://www.youtube.com/watch?v=NhFAkrWXeMM

爆破予告

 「5月24日午後0時29分に千葉大学及び千葉県警本部を爆破する」というメールが届いたと,千葉県警から連絡があり,千葉大では直ちに園児・生徒・学生と職員を構内から退避させ,構内立ち入り禁止,3限以降の授業を休講としました.幸いにも何事もなかったようであります.16時以降構内立ち入り措置は解除されました.
 昨年9月にも同様の事件があったばかりです.世相が荒んでいるのは心配です.

 大学の公式発表は以下の通りです:

**********

千葉大学に対する爆破予告とその後の対応について
掲載日:2021/05/24

 本日11時頃、千葉県警察本部より「5月24日午後0時29分に千葉大学及び千葉県警本部を爆破する」という内容のメールがあった旨の情報提供がありました。

 ただちに、学内の学生、生徒、児童、園児、教職員等を学外に退避させるとともに、外部から大学構内への立入りを禁止し、その上で、警察と連携のもと、大学構内の不審物の確認、不審者への警戒及び警備の強化を実施しました。

 その後、爆破予告時刻において爆発等の発生はなく、敷地内にも特段の異常がないことが確認されましたので、本日16時00分をもって立入制限措置を解除しました。

 なお、本日の授業については午後から終日休講とし、課外活動については明日朝までの全ての活動を禁止しました。

 今回の事案について、引き続き警察と連携しながら、必要な措置を講じてまいります。

https://www.chiba-u.ac.jp/others/topics/info/post_981.html


コナンめがね

 つい「コナンめがね」を買ってしまい,授業ビデオにサブリミナルのようにちょこっと入れておいたらどうだろうか,注意力試験のようなことをしてみたらどうだろうかと思っていたら,やれるもんならやってみたら良いじゃないですか,どうせ無視されるのが関の山なんだから,と若い同僚に罵倒されました.あきらめきれない!

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相変わらずお菓子

 巣ごもり生活のせいなのか,通販の利用に拍車がかかったような気がします.SNSで今まで知らなかった地方名産のお菓子を紹介されると,ついアマゾンで探します.
 北海道の一部では有名な「大嘗飴」というのは,昔懐かしい素朴な麦芽糖の風味と,これも懐かしい,割って食べるような大きさの飴でした.またとても堅いもので,噛んではならない,歯が折れますという注意を受けましたが,大げさではないらしい.現に紹介してくれた北海道出身の知人は,久しぶりに口にしたこの飴を子供の頃のように噛んだせいで,あっという間に歯の詰め物が2つ抜けたそうです.

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 別の知人からは,九州南部で広く行われているというハレの食べ物「あくまき」(「灰汁巻き」らしい)を紹介されました.たっぷりときなこをかけていただきます.「ゆべし」とか「ういろう」とか「すあま」とか,こういう食感のものは好物なので,喜んで賞味いたしました.が、何しろ純粋に餅米からできているので,一本が相当なボリュームであり,別にボリュームは驚きませんが,ただでも巣ごもりで増えた体重のためには良いものではなかったようです.

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 そうそう,そういえば,ドイツの知人が送ってくれたモーツアルト・クーゲルが,こんなに洗練されていて驚きました.美味しいのですが,かえって物足りない気さえしました!

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松村禎三作曲「TOMORROW 明日」

 現代日本の作曲家の作品には興味も関心もあり,好きな作品もたくさんあります.昔は視聴の機会を得ること自体が難しいものでしたが,近頃はCDも多く出され,何よりネット上で音源に触れることが比較的容易になりました.けれども,大作曲家たちが映画のために作った音楽は,伊福部昭の『ゴリラ』など少数の例外を除けば,サウンドトラックのCDすらなく,「使い捨て」られていくのがなんとも残念です.
 みなさん亡くなってしまいましたが,作家の井上光晴(1926 - 1992)の『明日―1945年8月8日・長崎』(1982)を,映画監督の黒木和雄(1930 - 2006)が「戦争レクイエム三部作」の第1作「TOMORROW 明日」として映画化し(1988),この音楽を作曲家の松村禎三(1929 - 2007)が作曲しました.原作も映画も音楽も好きなのですが,松村禎三の音楽の音源がなかなかありません.旋律というものはこういう風に考え抜いて構成するものなのだというお手本のような作品で,こんこんと湧き出るような静かな悲しみが胸にしみます.その昔「原爆文学」の連続講義をした際に,まだネットも発達していなかった時代だったので,原作と共にぜひこの松村の音楽も紹介したいと思ったのですが,音源を探すのに苦労した覚えがあります.
 現代日本の作曲家による弦楽オーケストラ作品を精力的に演奏している「オーケストラ・トリプティーク」が,松村の「TOMORROW 明日」を演奏会で取り上げ,CDにもし,ネットにも公開しています.

https://www.youtube.com/watch?v=500USOktnDU&list=RD500USOktnDU&start_radio=1

 無知で恥ずかしいのですが,こういう曲は,楽譜も出版されていないのでしょうか.「ペトルッチ楽譜ライブラリー」で古い楽譜を探すと,ちょくちょく手稿に行き着くのですが,昔の時代だからと言っていられないのかもしれません.今は楽譜ソフトが発達したので,埋もれた曲の楽譜を「刊本」にする,青空文庫のようなプロジェクトがあるべきかと思います.

Arthur Lourié: Cinq Préludes Fragiles

 忙しいときにこんなことしちゃったんですけど,ルリエの「こわれそうなプレリュード」全5,ストリングス版に編曲・シンセサイズしてアップしました.

https://youtu.be/AOz5tyHI-B8

 授業で使いたくて,Ernest Bloch: Baal Schemの楽譜を眺めていますが,コンピュータ音楽にするのは,私の力では無理なようです.ーーーところで,音楽家のErnest Bloch (1880 - 1959) を検索すると,間違えて哲学者のErnst Bloch (1885 - 1977) の写真が使われているサイトが複数引っかかります.活躍した年代も同じだし,名前も似すぎていますものね.

 ちゃんと原稿を書いたり,授業準備をしたりします.
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