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宇宙から見たきものありわが青田

 白井市に在住の毘舎利道弘氏は,歌人・俳人として房総の文芸界では知られた人で,入選を重ねておられます.私の素人考えですが,「俳味のある短歌・短歌のような思索のある俳句」が特徴的で,密かに愛好しています.

 突き詰めて突き詰めて尚山眠る
 宇宙から見たきものありわが青田

 矢印を信じるわれと信じぬ人結局彼らはどうなったのか
 真夏には夏よ過ぎよと真冬には冬よ過ぎよと言いてこの歳
 君たちのゲームオーバーとは違う本物のあり七十年前
 仏像は 数多悩みを 聞きおれど 秘して漏らさぬ 個人情報
 少子化を補うごとく図書館にリタイア組らぞろぞろとおり

 私より一回り上の先輩のようですが,このような心境で老年を過ごせるのは理想的だと思います.
 なおこの珍しい名字「毘舎利」は「びしゃり」とそのままお読みするようです.和歌山の方にある名字だと言うことですが,数少ないそうです.ますますのご活躍をたのしみにしております.

2024年度前期 ラテン語講読会のお知らせ

ずっと続けてきましたラテン語講読を,2024年度も継続します.

昨年度から続いてテクストはLoeb版のタキトゥス『歴史』です.今年度は第1巻59節からです.

毎週火曜日の10時半~12時,Zoomで行います.参加希望の方はXかFBのDMでご連絡ください.接続先をお知らせします.

初回は4月9日(火)です.この日分担を決めます.
以下7月30日(火)まで17回行い,前期で第1巻を終わる予定です(90節まで).

夏休みを取り,後期は10月1日(火)からで,第2巻に入ります.9月にまたお知らせします.

訃報 平尾浩三先生

 独文学者の東大名誉教授平尾浩三先生が,2024年3月3日に89歳で逝去されたと御家族から連絡を頂きました.心よりお悔やみ申し上げます.
 平尾先生は日本を代表するドイツ中世文献学の専門家で,公私ともに大変御世話になりました.仰ぎ見るばかりで,ご恩の一つもお返しできませんでした.

 平尾先生は,再版されて評判になったハインリヒ・プレティヒャ『中世への旅 騎士と城』と,この分野を学ぶのに不可欠な,あの浩瀚なヨアヒム・ブムケ『中世の騎士文化』の翻訳者です.郁文堂から中世ドイツ文学の作品の翻訳を出しては賞を取られました:ハルトマン・フォン・アウエ『ハルトマン作品集』,コンラート・フォン・ヴュルツブルク『コンラート作品選』,ザイフリート・ヘルブリング『中世ウィーンの覇者と騎士たち』.ドイツ語教育でも最良の成果を上げられ,中島悠爾・朝倉巧両先生と共著の『必携ドイツ文法総まとめ』を越える文法書は今もありません.値段も分量も手頃なのに,内容はずっしりとつまった良書ですから,もしかして今迷っている人がいたら,どうかこれを使って下さい!
 平尾先生のおかげで,後輩にはもう何もやることが残っていない,まさに草も生えない状態に困惑するばかりでありました.学識だけでなく人柄も管理能力も評価され慕われ,ドイツからも日本国内からも様々の業務を持ち込まれて多忙な中で積み上げられた教育研究業績です.

 「ドイツへ行って,きれいな景色だって,大人だけで眺めていたって別に面白くないよね.小さな娘がそばでワーッと喜んでくれるから,こっちもワーッと喜んで見るんだよ.そうじゃないかね」ーーーはい,そう思います.ありがとうございました.安らかにお眠り下さい.