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松村禎三作曲「TOMORROW 明日」

 現代日本の作曲家の作品には興味も関心もあり,好きな作品もたくさんあります.昔は視聴の機会を得ること自体が難しいものでしたが,近頃はCDも多く出され,何よりネット上で音源に触れることが比較的容易になりました.けれども,大作曲家たちが映画のために作った音楽は,伊福部昭の『ゴリラ』など少数の例外を除けば,サウンドトラックのCDすらなく,「使い捨て」られていくのがなんとも残念です.
 みなさん亡くなってしまいましたが,作家の井上光晴(1926 - 1992)の『明日―1945年8月8日・長崎』(1982)を,映画監督の黒木和雄(1930 - 2006)が「戦争レクイエム三部作」の第1作「TOMORROW 明日」として映画化し(1988),この音楽を作曲家の松村禎三(1929 - 2007)が作曲しました.原作も映画も音楽も好きなのですが,松村禎三の音楽の音源がなかなかありません.旋律というものはこういう風に考え抜いて構成するものなのだというお手本のような作品で,こんこんと湧き出るような静かな悲しみが胸にしみます.その昔「原爆文学」の連続講義をした際に,まだネットも発達していなかった時代だったので,原作と共にぜひこの松村の音楽も紹介したいと思ったのですが,音源を探すのに苦労した覚えがあります.
 現代日本の作曲家による弦楽オーケストラ作品を精力的に演奏している「オーケストラ・トリプティーク」が,松村の「TOMORROW 明日」を演奏会で取り上げ,CDにもし,ネットにも公開しています.

https://www.youtube.com/watch?v=500USOktnDU&list=RD500USOktnDU&start_radio=1

 無知で恥ずかしいのですが,こういう曲は,楽譜も出版されていないのでしょうか.「ペトルッチ楽譜ライブラリー」で古い楽譜を探すと,ちょくちょく手稿に行き着くのですが,昔の時代だからと言っていられないのかもしれません.今は楽譜ソフトが発達したので,埋もれた曲の楽譜を「刊本」にする,青空文庫のようなプロジェクトがあるべきかと思います.