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ノイジードラー「ユダヤ人の踊り」

 作曲家・演奏家の榎本智史氏のツイートで教えていただいたのですが,Hans Neusidler (1508?-1563)というドイツのリュート奏者・作曲家による,「ユダヤ人の踊り」という リュート用の曲が残されています.1536年に出版された2巻本の作品集に収録されているのですが,リュート用の記譜で私には読めません.

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Adolf Koczirz (1870-1941)が校訂した Österreichische Lautenmusik im XVI. Jahrhundert. Denkmäler der Tonkunst in Österreich, Bd.37. Wien, Österreichischer Bundesverlag, 1911. の中に収められています.

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とんでもない楽譜です.このまま演奏すると,こんな感じになるようです.

https://www.youtube.com/watch?v=lhI1pGOCqWE

これは偏見と差別なのか,それとも,聞き慣れない「調性」をなんとか模倣しようとしたのか.
実際にあまりの「不協和」に驚いたのか,「修正」した演奏もあるようです.

https://www.youtube.com/watch?v=z55gwQLVqIc

旋律線を半音上げ,ホ長調で調和するようにしたのです.けれどもこれだと,一気に迫力も魅力も無くなるような気がします.今となっては容認され得ない「悪戯」が不思議に現代風な表現の拡大を生んでしまっているということでしょうか.何とも評価の難しい音楽史のエピソードです.