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カティリナの謀叛

 ラテン語講読の授業で10年以上ずっと続けてきたカエサル文集が先日無事終わりました.定年前になんとか終えられて安心いたしました.『ヒスパニア戦記』には手を焼きましたが,幸いにも最近岩波から高橋宏幸先生の『カエサル戦記集』が出版され,最新の研究成果を踏まえたこの書の導きで何とか読み終えられました.『ヒスパニア戦記』は,テクストがいかに校訂されるかの見本のような書物ですので,機会があればそのような教材としてまとめられればいいなと,はかない夢を抱いております.

 特に感慨も打ち上げもあるでなく,直ちに次の教材に移りました.次に選びましたのはサルスティウス(Gaius Sallustius Crispus BC86 - 35)の『カティリナの謀叛』(De coniuratione Catilinae, De bello Catilinae)です.その昔院生の頃に授業で講読し,感銘を受けたものです.こうやってこつこつ古典語講読の授業をしながら人生を送れたらどんなにいいだろうと人生の夢を決めたきっかけになった授業でした. 戻って参りましたが,調べ物に追われて感慨にふける暇もありません.

 カティリナは独裁者スラの部下として頭角を現した人ですが,派手な生活で借金がかさみ,起死回生をかけて借金棒引きを公約に執政官に立候補するも元老院に阻まれ,クーデタを企んだが未然に発覚して攻め殺されました.めまぐるしく情勢の動く共和制ローマ末期のエピソードの一つです.これをカエサルの部下であったサルスティウスがコンパクトな歴史書にまとめました.文体文意の明確さで,昔から一級の歴史書として高く評価されています.
 反カティリナのリーダーで当時執政官であったのはあのキケロでした.キケロには事件の渦中に元老院で行った『カティリナ弾劾演説』という 4本の演説が残されています.第1演説の冒頭の言葉「カティリナよ,いつまで我々の忍耐を浪費する気だ」”Quo usque tandem abutere, Catilina, patientia nostra? ” が有名です.

 ずっと火曜日2限で続けております.興味ある方はどうぞ覗いてみてください.これもまた確かな新訳が出るらしいので,一層勉強もはかどることと思います.