SSブログ

「展覧会の絵」

 ムソルグスキーの「展覧会の絵」の,プロムナードのメロディーだけを集めた合唱編曲版を試作しました.

https://youtu.be/MbHtKxG58nA

 あのメロディーはムソルグスキーの急死した親友,画家のヴィクトル・ハルトマンを表していると私は思っています.第8曲「カタコンベ」の後半部,「死者と共に,死者の言葉によって」に現れる「プロムナード」のメロディーは,死後なお冥界に彷徨う親友ハルトマンの姿であり,そのハルトマンと語り合うムソルグスキーの姿でしょう.そして終曲「キエフの大門」の中程,2度目のコラールが終わり,しばし曲を覆った不安定な雰囲気が晴れていって,きらめく分散和音の中に8小節ほど浮き上がる「プロムナード」のメロディーは,天国の門へと昇天していくハルトマンの姿ではないかと思います。この2曲で,"dies irae" と "in paradisum" の役割を果たし,組曲「展覧会の絵」は全体として requiem になっているのだと思います.
 子どもの頃から大好きな曲ですが,「キエフの大門」の中に「プロムナード」のメロディーが現れるところが昔から気になっておりました.不思議なことに,知り合いの誰も,音楽関係の方でも,それに気付いてさえいないようでした.あの大門は,天国の門ではないでしょうか.

 レクイエムが私たちの心を打つのは,それが本来「生の賛歌」であるからだと思います.故人の歩みを様々な形で思い起こし,様々な「絵」として愛おしみ,こうして故人を生かし続けることであろうと思います.霊魂の不滅とか,永遠の生とかいうものを私たちがほんの少しでも予感できるのは,このような追悼の祈りにしかないでしょうから.

 1年前には想像もしなかった年末になりました.精一杯やっているつもりですが,まだまだ足りないようです.地には善意の人があふれ,「生の賛歌」が鳴り響いていることに,日々力づけられ,感謝しています.

 どうか,良いお年をお迎え下さい.