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こわれそうなプレリュード

 学校で普通に行われているような西洋音楽史を「ドイツ人のフィクション」という言い方をすることがあります.全てがドイツ人の責任ではないかもしれませんが,音楽史記述に重大な偏りがあることは,モーゼル『サリエリ伝』の勉強会などを続けていたりすると,ますます強く感じます.同時に,現代音楽の始まりについての「ストラビンスキーのフィクション」とでも言うようなものもあるのではないかと私などは思います.もしかしたら「パリジャンのフィクション」かもしれません.
 現代音楽の行く末について,シェーンベルクの切り開いた方向にも,「ストラビンスキーの方向」にも肯んぜず,調性音楽の落ち穂をかき集めるようにあがいた音楽家たち(例えばフランス6人組)が個人的に私の好みです.同じように現代音楽の流れに抗し,スクリャービンの後を継いで,濃密な曲を残した音楽家たち(例えばメトネル)の作品にも惹かれます.
 アルトゥール・ルリエもその一人です.ルナチャルスキーの一の部下で,一時期は革命後のロシアの音楽界を指導したそうですが,亡命後はロシア音楽史から名前を抹殺された感があります.音源が極めて少ないのですが,後年のモダニズムの曲よりは,スクリャービンの影響が濃厚な初期の作品が好きです.好きが高じて,そのルリエのピアノ小品集,作品番号1,Les Preludes Fragiles 「こわれそうなプレリュード」の第1番を,ストリングス用に編曲してみました.

https://youtu.be/GMJo3iRtKI8

さらにコーラスを付け,その上にNEUTRINOの歌声を重ねてみました.NEUTRINOは,ゆっくりしたテンポの曲,長く伸ばす音に弱く,約4.5秒以上の長音をあてがうと,音程が崩壊を始めます.人間離れした速く,細かいパッセージが得意なのですが,そうでない不得手な分野をやらせてみる実験でした.

https://youtu.be/qpx1msTjJC8

NEUTRINO
こわれそうな あなたの プレリュード
弱い あなたの 声が届いた わたしにも
そっと かすかに 始まりを告げる音が
ありがとう あなた